映画も好きです
最終修正日 2010年10月25日
ピロスマニ(ゲオルギー・シェンゲラーヤ)
誰もほとんど演技していない。青暗くて静かな映画。関西エキプ・ド・シネマの公演で2回見て、さらにその後西武美術館での「ニコ・ピロスマニ展」開催に合わせて上映されたこの映画を見るためにわざわざ東京へ行った。「この酒をどう飲むかだよ。ゆっくり飲んで重い命を引いていくか、それとも一気に飲んで最後を早めるか、それがわからんのだ」
天井桟敷の人々(マルセル・カルネ)
この映画も何度も見た。映画史上最高傑作の一つ。バチストは雑踏に紛れていくギャランスを必死につかまえようとするが、人波に押し戻されてしまう。二人の永遠の別れが始まろうとする。まだすぐ近くに彼女はいるというのに。「ギャランス!」 (バチストの愛されない妻を演じたマリア・カザレスの「パルムの僧院」(ジェラール・フィリップ主演)での堂々とした演技も見てください。)
2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック)
ストラディバリを超えるヴァイオリン製作が難しいようにSF映画がこの映画をしのぐのは困難なように私には思える。猿人が真上に放り投げた
大腿骨が上昇から落下へと転じる瞬間、宇宙ステーションに切り換わる場面は、私が見た映画のなかでもっとも美しいシーン。HALが死の恐怖に脅えてボーマン船長に和解を訴えるシーンは哲学的問題を提示する。「デイジー、デイジー・・・、答えておくれ・・、僕は夢中・・・・、愛がいっぱい・・・」
アメリ(ジャン=ピエール・ジュネ)
玉すだれが動く気配にニノを期待したのに猫のしわざとわかってアメリががっかりするシーンが切ない。効率的でない生き方をしている人々を見るとほんとうにホッとします。あの超「嫉妬」男ジョゼフ役のドミニク・ピノンが主演した同じ監督による、笑えるホラー映画「デリカテッセン」も好きです。「人生は果てしなく書き直す未完の小説だ。」
マイ・フェア・レディ
レックス・ハリソン、オードリー・ヘップバーン主演、そしてフレディ役に、後に「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズの主演で名を馳せることになるジェレミー・ブレットが出ていたことは知っていたが、監督ジョージ・キューカーの名前は全然憶えていなかった。「スペインの雨はおもに平野に降る」
街の灯(チャールズ・チャップリン)
ボクシングのシーンは何度見ても笑わされ,最後のシーンは何度見てもわかっていても目頭が熱くなります。「あなたでしたの?」
ツィゴイネルワイゼン(鈴木清順)
切り通しの場面のたびに、生と死のはざまに連れていかれるような感覚。そのうち冷たく鈍い恐怖がからだに染み込んでくる。自分は生きているけれど、知らぬ間に死を経験したその死後を生きているのではないかと訝しむぐらいまでに。豊子の草履跡に貼り付いた六文銭。とにかく怖い。「君には聞こえなかったかね。なんだか人の声がしたんだ。」
北北西に進路をとれ(アルフレッド・ヒッチコック)
ヒッチコックの映画は「サイコ」、「眩暈」、「鳥」等々、どれも好きですが、堂々と下ネタで終わるこの映画を選びました。
過去のない男(アキ・カウリスマキ)
アキ・カウリスマキの映画は、毎回お馴染の俳優が演じています。吉本新喜劇を見るような安心感があります。カティ・オウチネンの存在感は(似てはいませんが)まるでフィンランドの市原悦子です。この映画を観てヘルシンキに約1年も暮らしていながら,私は学生寮のあったアンティ・コルピン・ティエと大学の数学教室のあったハリトゥス・カツとの往復間の風景しか見ていなかったことに気づき愕然とした。「人生は後ろには進まない」
アンダー・ザ・シルバー・レイク(デイヴィッド・ロバート・ミッチェル)
ハリウッド版補陀洛渡海。映画には全裸の,半裸の女性が(もちろん着衣の女性も)多く登場するが,デルヴォーの絵の中の女性たちのように見える。サラが夜のプールサイドでマリリン・モンローの映画の一場面を再現するシーンのなんと美しいことか。「とうの昔に人生から脱落したと思うことはない?あるべき人生の「失敗編」を生きているって。」
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