第13回 楽器と数学(7月7日)


中間レポート課題2が出ています(7月13日締切)


楽器のかたち


 これまで学んだように、音の高さを決めるのは振動数である。例えば、国際基準ピッチでは440 Hzはピアノの鍵盤の真ん中のラの音で、そのオクターブ上のラは倍音の880 Hz、そのさらにオクターブ上のラの音は倍音の1760 Hzである。真ん中のラより1オクターブ下のラは220 Hzである。
 つまり異なる振動数を出せるような構造になっていなければ、楽器としては成立しない。実際の楽器は、どのように異なる振動数の音を鳴らしているのだろうか。


管楽器 気柱の共鳴

 管楽器(英Wind instrument, 独Blasinstrumente)は、呼気や風によって空気を振動させて音を発する楽器を指す。一般には、呼気を菅に送ることで、菅の中の空気を振動させて音を発しているものを指す。片方の口から加圧された空気が管楽器の菅(筒)の中で共鳴し定常波ができた時に音が鳴る仕組みになっている。

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 共鳴して音が鳴っているとき、片方の口が閉じている閉菅の場合は菅の中で左図のような定常波ができている。実際は音の疎密波なので、腹(振幅が大きいところ)では、空気が激しく動き、節(振幅0のところ)では空気は全く動かない。閉菅の場合、共鳴する最も小さい振動数を基本とすると、その3倍、5倍という奇数倍の音で共鳴する。

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 両端が開いている開管の場合は、腹の部分が端にくる。そのため、閉菅と比べて基本振動の振動数が2倍になる。同じ菅の長さであれば、開管の方が閉菅よりも高い音が出る。これはフルートとクラリネットの長さはそれほど変わらないにも関わらずフルートが高い音を出す要因である。また、開管の場合は、基本振動の2倍、3倍と整数倍の音で共鳴する。


トランペット

 トランペットやホルンなどの金管楽器は、バルブを押さえなくても、ド、ソ、ド(上)、ミ…と異なる音を出すことができる。これは、加圧した空気を送る際、空気の圧力を口元で変えていることで実現している。高い音を出したければ口を小さく開けて振動させる。また、バルブを押さえると、菅が長くなる。間が長くなると、波長は長くなるので音は低くなる。手前から順番に、全音下がる、半音下がる、全音+半音下がる、ようになっており、その組み合わせて音階を実現している。


 パイプオルガン

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 オルガンは、加圧した空気を選択したパイプに送ることで音を発する。鍵盤部分はパイプの選択をしている部分である。一つの菅の長さで出せる音は基本振動の音とその倍音となり、それでは音階を鳴らすことはできない。そのため様々な長さのパイプが必要になる。


弦楽器・ピアノ


 弦楽器は、弦を押さえることで振動数を変化させ、弓で擦って弦を振動させる。それによって駒が振動し、その振動が中の空洞部分で共鳴し音を鳴らしている。弦の固有振動数(指で押さえない時の振動数)は、196 Hz, 293.7 Hz, 440Hz, 659.3 Hzである。弦の長さはそれほど変わらないのに、振動数が大きく違うのはなぜか。

 

 振動数を決めるのは、長さだけではなく、弦の張力や線密度によって決まるため、弦の太さや重さを変えることで異なる振動数を出すことができる。

 ピアノも鍵盤がある楽器であるが、オルガンとは異なり管楽器ではない。ピアノの中は異なる長さの弦が並んでいて、どの音をハンマーで叩くかを鍵盤で選択する。もし、すべての鍵盤の音を同じ線密度の弦で鳴らそうとすると、パイプオルガンのように大きなものになってしまうが、低い音を太い弦に、高い音を細い弦にすることで、大きくなりすぎないよう工夫されている


考察 弦楽器には、体の大きさに合わせて分数楽器がある。3/4, 1/2, 1/4, 1/8, 1/16, 1/32楽器などがある。大きさは変わるのに、同じ周波数音域を出せる理由はなんだろうか。


数学と音楽

 ヨーロッパでは中世(20世紀でも)、リベラルアーツとして文法・論理や算術・幾何とともに音楽も学ばれていて、重要視されていた。実際、数学ができる音楽家や楽器ができる数学者はとても多く、その共通点はしばしば議論される。モーツァルトはビリヤードがうまかった(数学的な知識により軌跡を計算していた)、アインシュタインはバイオリニストでもあった、フィールズ賞の小平邦彦はピアノがうまかった、など音楽と数学を両方習得している偉人は数多い。また最近の研究では、楽器を演奏することでIQが上がる、幼少期に音楽を学ぶと語学の習得が早い、など楽器と脳の発達の関係が科学的に議論されている。


音色を決めるもの:音の重ね合わせ

 楽器を特徴づけるのは、その音色である。これまで学んだように、音に含まれる基本音が音の高さを決め、倍音が音色を決めるのであった。実際には、基本音に対してどのような比率で倍音が含まれているのか、が音色を決める上で重要である。実際に色々と音を鳴らして、その比率を変えて音色の変化を見てみよう。

課題2 入力例1を参考に、音を様々な比率で混ぜて音色を確かめよう。

入力例1

Manipulate[Play[{a Sin[2 Pi 440 t], b Sin[2 Pi 440 2 t], c Sin[2 Pi 440 3 t]}, {t, 0, 2}], {a, 0.1, 2, 0.1}, {b, 0, 2, 0.1}, {c, 0, 2, 0.1} ]





 

 


音色を決めるもの:音のエンベロープ 

 これまで行ってきたフーリエ周波数分析は、音を解析する上で強力な道具であるが、実際には、これによって失われた情報があり、音色を決める上でその失われた情報も重要である。実際に、ギターやピアノの波形とオルガンやバイオリンの波形を比べてみよう。

課題3 Workフォルダの音源(0707.mp3は色々な楽器のラ)をMathematicaにインポートして波形を見てみよう。


  ピアノやギターでは、弦をハンマーでたたいたり指で弾いたりして音を出すため、弦の振動は初めが一番振幅が大きく、ただちに減衰する減衰振動である。一方、それに対し、オルガン・管楽器やバイオリンは、減衰しない音を出すことができる。このように、楽器によって、その全体の波形が異なっている。この波の山の部分をつないで得られる曲線は振幅の時間変化を示しており、エンベロープ(包絡線)と呼ばれる。

 実は、私たちが楽器の音を聴いて「これはピアノ」「これはフルート」というように区別をする際には、音色だけではなくこのエンベロープの情報をかなり使っている。とりわけ、音の立ち上がり部分(アタック)が大事であることが知られている。


課題4 Workフォルダの音源をMathematicaにインポートして、離散フーリエ変換を行い、周波数分析をせよ。得られた周波数とその比率を使って、元の音が再現できるか試してみよう。