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2017年度松江セミナー

  講演者 題目 日時 場所
第1回 松家 敬介 氏
(武蔵野大学工学部数理工学科)
Hutchinson-Wright方程式の離散化とその解の安定性について 5月30日(火)
14:30-16:00
総合理工学部
三号館六階
数理第1総合演習室
アブストラクト: Hutchinson-Wright(以下、HW)方程式はロジスティック方程式に時間遅れの効果を加えた方程式であり、生物種の増減を記述する数理モデルとしても知られている。本講演ではHW方程式の離散化とその解の安定性と時間遅れのパラメータの関連について議論する。
第2回 大森 亮介 氏
(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
性感染症疫学におけるネットワーク科学の展望 6月13日(火)
14:30-16:00
総合理工学部
三号館六階
数理第1総合演習室
アブストラクト: 性感染症の流行制御が目的である性感染症疫学において性感染症の流行ダイナミクスの理解は必須であるが、未だ十分とは言えないレベルであり、昨今の性感染症流行挙動の因果関係は不明な部分が多い。これは、病原体の生活史の理解の不十分さにもある程度の原因があるが、ほとんどが宿主の感染リスク因子の、特に性行動の理解の不十分さに起因する。性行動はデータの正確さの欠如と取得の難しさからこれまであまり定量的な理解がなされてこず、制御の際に求められる精度の性感染症流行の推定は行えていない。本講演ではこれまでに報告されてきた、性的接触ネットワークを初めとした性行動データと性感染症流行の関係性を整理し、性感染症流行の推定における問題点とその解決方法を提案する。
第3回 沢井 洋 氏
(沼津工業高等専門学校)
可解多様体上の LCK 構造と Vaisman 構造について 7月12日(水)
16:30-18:00
総合理工学部
大学院棟七階
数学第3セミナー室
アブストラクト: コンパクトなエルミート多様体について, そのリーマン計量が局所的に共形変換するとケーラー計量となるとき, これを局所共形ケーラー多様体 (LCK 多様体) という. また, 局所共形ケーラー多様体における Lee 形式が Levi-Civita 接続に関して平行のとき, これを Vaisman 多様体という. べき零リー群や可解リー群が推移的に作用するコンパクト多様体を, べき零多様体, 可解多様体とそれぞれいうが, べき零多様体上の局所共形ケーラー構造は Vaisman 構造となる. これに対し, 可解多様体の場合, 局所共形ケーラー構造は Vaisman 構造となるとは限らない. 本講演では, 可解多様体の構造をもつ井上曲面は, 局所共形ケーラー構造の構造をもつが, Vasiman 構造をもたないことを示す.
第4回 瀬戸 道生 氏
(防衛大学校)
Theory of quasi-orthogonal integrals and its applications to graph theory 12月22日(金)
14:00-15:00
総合理工学部
大学院棟七階
数学第3セミナー室
アブストラクト: 2年前の松江セミナーで披露した構想の顛末をお話しします。 グラフの包含 $G_0 ¥subset G_1$ を一様に膨らませ、グラフの時間発展 $G_0 ¥subset G_t ¥subset G_1$ $(0 \leq t \leq 1)$ を考えます。 ここに de Branges-Rovnyak, Vasyunin-Nikolskii によるquasi-orthogonal integral の理論を導入すると、グラフラプラシアンに関する不等式を複数得ることができます。 この方法は、不等式を量産する反面、かなり込み入ったものなのですが、喜ばしいことに(残念なことに?)簡単な証明も見つけました。従って、少々牛刀割鶏の感のある話になりますが、「de Branges が Bieberbach 予想証明の際に使った(そして現行の証明では失われている)方法をグラフ理論に適用した」という意味では多少の価値があるのではないかと思います。 
第5回 山内 貴光 氏
(愛媛大学大学院理工学研究科)
Asymptotic dimension and graphs with large girth 12月22日(金)
15:15-16:15
総合理工学部
大学院棟七階
数学第3セミナー室
アブストラクト: Gromov (1993) は, 擬等長で不変な被覆次元の類似概念として, 漸近次元 (asymptotic dimension) を導入しました. 漸近次元と被覆次元に関する未解決問題として, Dranishnikovの問題「固有距離空間の漸近次元と, そのHigsonコロナの被覆次元は一致するか」があります. 本発表では, 漸近次元に関する遺伝的無限次元性という観点から, 内周の増大するグラフの列を適切に並べた距離空間が, Dranishnikovの問題の反例の候補になり得ることを説明します.
第6回 上別府 陽 氏
(島根大学)
グラフのboxicityと彩色数の関係について 12月22日(金)
16:30-17:30
総合理工学部
大学院棟七階
数学第3セミナー室
アブストラクト: 有限単純グラフの点とk個の閉区間の直積で作られるk次元空間内の直方体の間の対応で,「グラフの2点が線分で結ばれること」と「点に対応するk次元直方体が交差すること」が必要十分であるものをグラフのk-box representationと呼ぶ。グラフGが持つk-box representationの中で,最小の値kをGのboxicityと呼び,box(G)で表す。また,グラフGの彩色数をχ(G)で表す。
彩色数やboxicityが具体的に評価できるグラフの例をいくつか調べてみると,一般にbox(G)≦χ(G)が成立するように思われる。しかしbox(G)>χ(G)が成立する例があるどころか,確率論的手法によりほとんどすべてのグラフに対してbox(G)>χ(G)であることが, Chandran氏らによって指摘されている。この講演では,box(G)≦χ(G)が成立するグラフについて考察することを目的とし,それに関連して5th International Combinatorics Conference (at Monash University, Melbourne, Australia, 3th-9th Dec. 2017) にてある研究者から知り得た最新の情報についても紹介する。

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