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2013年度松江セミナー

  講演者 題目 日時 場所
第1回 渡邉 忠之 氏
(島根大学大学院総合理工学研究科)
モース理論と3次元多様体の不変量 5月29日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト:
第2回 上田 好寛 氏
(神戸大学大学院海事科学研究科)
非対称な緩和項を持つ対称双曲型方程式系の減衰構造の解析とその応用 6月14日(金)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: 緩和項を持つ双曲型方程式系に関して,静田・川島(Hokkaido Math. J., 14 (1985))によって導かれた安定性理論が有名であるが,近年その安定性理論が適用できないモデルが知られてきた. その代表的なモデルとして,梁の振動を記述するTimoshenko方程式系とプラズマ現象を記述するEuler-Maxwell方程式系があげられる.この二つの方程式系の持つ消散構造はこれまでの方程式系とは異なり,高周波域で極めて脆弱で,エネルギー評価の消散項部分や減衰評価において可微分性の損失を引き起こすことが知られている. そこで,今回はこの二つの研究を基に,より一般的な方程式系について解析を行い,安定性が成り立つための条件と対応する消散構造について着目し議論を進めていく.
第3回 田丸 博士 氏
(広島大学大学院理学研究科数学専攻)
左不変計量の成す空間 --- ミルナー枠の一般化について
(談話会を兼ねる)
7月17日(水)
16:30-17:30
総合理工学部
三号館六階
数理第二総合演習室
アブストラクト: リー群上の左不変計量は, Einstein あるいは Ricci soliton などの特別な計量の具体例を供給する. これらの研究において, 与えられたリー群が特別な左不変計量を許容するかどうかを判定することは, 中心的な問題である. この問題は, 3次元 unimodular リー群に対しては, Milnor 枠を用いることにより, 解決されていると言って良い. 最近我々は, 3次元とは限らない一般のリー群に対して, Milnor 枠の一般化に相当するものを構成する手続きを与えた. 我々の手法は, 左不変計量の成す空間の研究に基づくものであり, 非コンパクト対称空間内の部分多様体論とも密接に関係する. 本講演では, 上記の手続きを, いくつかの具体例と共に紹介する. また, Milnor 枠の擬リーマン版についても触れる予定である.
第4回 谷口 哲至 氏
(松江工業高等専門学校)
ホフマングラフとグラフの階層構造 7月24日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: ライングラフの最小固有値が-2以上であることは良く知られている。これにより、最小固有値によるグラフの階層構造を知ろうという問題が自然と生じるのだが、(良く知られている)ライングラフの構成法では最小固有値が-2よりも小さいグラフを構成する事はできない。そこで R. Woo と A. Neumaier [1]は、グラフの「辺」を「点」で置き換えるという単純な作業であるライングラフの構成法を高度に一般化し、最小固有値が-2よりも小さいグラフの構成法を定式化した。[1]では、最小固有値-1-\sqrt{2}以上のグラフが分類されている。それには(9種類の)ホフマングラフと呼ばれる特別なグラフ達の和の概念が用いられており、そこにホフマングラフの既約性と共にルート系との関わりも生じる。これこそ最小固有値によるグラフの階層構造を解明する道であり、更に階層を降りる為にもっと多くのホフマングラフを知る必要がある。
本講演ではグラフの固有値研究についての先行研究、ホフマングラフについての基本的な概念、そしてグラフの最小固有値問題についてこれまでの成果を紹介する。
[1] R. Woo and A. Neumaier, On graphs whose smallest eigenvalue is at least -1-\sqrt{2}, Linear Algebra Appl. 226-228 (1995), 577--591.
第5回 清水 達郎 氏
(東京大学大学院数理科学研究科)
ホモロジー3球面の2つの不変量 -Morse homotopy不変量とKontsevich-Kuperberg-Thurston不変量- 7月26日(金)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第1セミナー室
アブストラクト: 球面と同じホモロジーをもつ3次元多様体をホモロジー3球面という.ホモロジー3球面内のlinkのlinking numberを"測る"2-コサイクルを使って,不変量が構成できる(Chern-Simons摂動論の一つの解釈).こうして得られる不変量をKontsevich-Kuperberg-Thurston不変量という.Chern-Simons摂動論にアイデアを得た別の不変量に,Morse homotopy不変量と呼ばれる不変量がある.Morse homotopyは深谷賢治氏が1次の項の主要部分を構成し,渡邉忠之氏がそれを完成させ,さらに高次まで拡張した.これら2つの不変量の間には,その背景からも,なんらかの関係があると予想されていた.この講演では,これらの不変量について概観したあと,表題の2つの不変量が実際に一致することの証明のアイデアを述べる.
第6回 北田 健策 氏
(東京理科大学大学院理学研究科)
位相空間の主束上の平坦な平行移動とそのホロノミー群について 10月9日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: 位相空間の束の圏において,従来の接続理論の一般化や類似な理論の研究がなされてきた。その一種としてslicing functionは,A. AsadaやJ. Milnorによって個別に研究されている。slicing functionはK-理論やcyclic homologyの理論において諸所で用いられてきたが,近年,可微分なベクトル束の圏においてJ. KubarskiやN. Telemanによってdirect connectionと呼ばれ,体系的に研究されている。最近我々は位相空間の主束上において,slicing functionに関連した点列に沿う平行移動を導入し,そのホロノミー群の諸性質を研究している。本講演では,slicing functionや点列に沿う平行移動に対し,束の底空間の被覆に依存した平坦性の概念を導入し,その諸結果について述べる。
第7回 山ノ井 克俊 氏
(東京工業大学)
Vojtaの辞書について 11月6日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
三号館六階
数理第二総合演習室
アブストラクト: Vojtaの辞書とは、複素解析におけるネヴァンリンナ理論と数論におけるディオファントス問題、といういっけん関係のなさそうに見える二つのテーマの間には実は類似性がある、ということを述べたものです。この講演では、一次元の場合に話を絞って、Vojtaの辞書についてお話しいたします。
第8回 阿部 隆次 氏
(東京工芸大学)
算術的フリッケ群とマルコフ・スペクトル 11月20日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: 二元生成のフックス群であり, その作用による上半平面の商空間が一点穴あきトーラスとなるものをフリッケ群とよぶ. 算術的なフリッケ群は4つしかないことが知られている. マルコフ・スペクトルは実係数の二元不定符号二次形式の整数格子に関する最小値を用いて定義され, その形式から得られる方程式の解の連分数展開によっても意味づけされる. 算術的フリッケ群の最も対称性の高いものはモジュラー群の指数6の部分群であり, それによる一点穴あきトーラス上の単純閉測地線がマルコフ・スペクトルの離散部分に対応していることが H. Cohn により指摘されて以来, 関連する研究が散発的になされている.
本講演では対称性の最も高いもの以外の3つの算術的フリッケ群とマルコフ・スペクトルとの類似の関係について解説する. 結果は I. R. Aitchison と B. Rittaud との共同研究による.
第9回 三石 史人 氏
(東北大学大学院理学研究科)
距離空間のカレントとそのホモロジー 11月27日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: 私は距離空間が弱局所リプシッツ可縮という概念を導入しました。それは、位相空間が局所可縮であるという概念の距離空間のカテゴリーにおけるアナロジーに他なりません。 カレントとは古典的にはド・ラームによって微分可能多様体の微分可能形式の連続双対の元として定義されました。2000年に Ambrosio と Kirchheim は距離空間のカレントを定義しました。それは、リプシッツ関数の組を形式と思って、その連続双対空間の元として定義されます。さらに、距離空間のカレント(の内、良いクラス)は、鎖複体を成します。 私は、弱局所リプシッツ可縮距離空間において、上述のカレントのホモロジーと特異ホモロジーが自然に同型となる事を証明しましたので、それを報告致します。
第10回 澤 正憲 氏
(名古屋大学大学院情報科学研究科)
ヒルベルト恒等式と球面上のデザインの相互関係について 12月4日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: 斉次多項式$(x_1^2 + \cdots + x_n^2)^r$が$x_i$達の$2r$乗項の実一次結合によって表されるとき,これをヒルベルト恒等式という.ヒルベルト恒等式は,整数論のワーリ ング問題のヒルベルトの解において重要な役割を果たした(Math. Ann., Vol.67, 1909).本講演では,ヒルベルト恒等式に関する基本的な結果や,ヒルベルト恒等式と数値解析の主要な研究対象であるCubature公式の相互関係に ついて,講演者自身の研究成果を交えながら紹介する.
第11回 波場 直之 氏
(島根大学総合理工学部物質科学科)
素粒子の標準模型、ヒッグスの発見、strong CP問題と幾何学 12月18日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: 素粒子論と数学は、超弦理論、場の理論、CFT等で分るように相互の発展に重要な役割を果たしてきた。今回は、素粒子の標準模型と言われる、現在の全ての実験をほぼコンシステントに説明することができる理論について解説して、さらに、今年のノーベル物理学賞受賞のヒッグス粒子について解説する。そして、最後に、標準模型では説明できない「strong CP問題」を紹介し、(物理学で殆ど使われてこなかった新しい数学を使った)その新しい解決案について提案したい。
第12回 武藤 哲也 氏
(島根大学大学院総合理工学研究科物理・材料科学領域)
超伝導入門 1月22日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: 超伝導は物質固有のある温度で電気抵抗がゼロとなる特異な物理現象である.超伝導現象自体の興味深さに加えて,電気抵抗消失等の諸性質を活かした素子や装置の開発という応用上の重要性も高い.しかし,それ以上に,超伝導現象の原理や性質を理解するための研究が進んでいく中で,学問的にも新しい概念が生み出され,その概念が宇宙の成り立ちを解く鍵にもなるなど,超伝導現象が物理学全体に与えた影響が多大であることは特記すべき点である.本講演では,基本的な超伝導現象を紹介し,超伝導発現の原理を解き明かしたBCS理論を概説した上で,超伝導現象とHiggs粒子との関連にも触れたい.
第13回 小関 健太 氏
(国立情報学研究所・JST, ERATO, 河原林巨大グラフプロジェクト)
閉曲面上のグラフのハミルトン性 1月29日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟7階
数学第2セミナー室
アブストラクト: グラフの全ての頂点を通る閉路をそのグラフのハミルトン閉路と呼ぶ.平面グラフに代表される,閉曲面上のグラフのハミルトン閉路に関しては4色定理などとの関連から研究がはじまり,Tutte, Thomassen, Thomas らの研究を経て大きく進歩してきたが,その一方で,Grunbaum と Nash-Williams による「任意の 4-連結なトーラス上のグラフはハミルトン閉路を持つ」という予想は40年以上未解決のままである.本講演では,この予想の周辺を ``グラフのタフネス'' との関連を中心に述べる.
第14回 内山 充 氏
(島根大学大学院総合理工学研究科)
行列関数の解析 -作用素不等式, 多項式系, ガンマ関数- 3月5日(水)
16:00-17:30
総合理工学部
三号館6階
数理第2総合演習室
アブストラクト: Let f(t) be a real continuous function defned on an open interval I of the real axis. Then f(X) is well-defined for any bounded selfadjoint operator (or Hermitian matrix) X whose spectrum is in I. f is called an operator monotone function and denoted by f ∈ P(I) if the mapping X→ f(X) preserves operator order. tα∈ P(0,∞) for 0 <α ≤ 1, but tα∉ P(0;∞) for α> 1. The Löwner (Loewner) theorem is fundamental on the study of this area: f ∈ P(I) if and only if f has a holomorphic extension to the upper half plane C+ of C which is a Pick function. g(t) is said to majorize h(t) if h ◦ g-1 is operator monotone. This was named after the classical majorization between two sets of real numbers. We first establish Product Theorem and then extend the Furuta inequality. We last refer to the principal inverses of polynomials and one of the gamma function.

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