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2011年度松江セミナー

  講演者 題目 日時 場所
第1回 佐野 良夫 氏
(国立情報学研究所)
グラフの競争数について 4月27日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 1968年 J. E. Cohen は、生態学の問題と関連して、有向グラフに対して定義される「競争グラフ」という概念を導入した。 その競争グラフの概念をもとに、1978年 F. S. Roberts は、(無向)グラフに対して「競争数」と呼ばれる数を定義した。 1982年に R. J. Opsut はグラフの競争数を求める計算問題はNP困難問題であることを示しており、一般のグラフに対して、この競争数を求めるのは難しい問題である。 本発表では、このグラフの競争数について、今までに知られている結果および発表者が最近得た結果について紹介したい。
第2回 神吉 知博 氏
(松江工業高等専門学校)
Dynkin型クイバーに付随する半単純有限概均質ベクトル空間について (名倉誠氏(奈良高専)と大谷信一氏(関東学院大学)との共同研究) 5月11日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 概均質ベクトル空間の理論は,1961年に佐藤幹夫氏により創始されて以来,多くの分野と関わりをもちながら発展してきています. そういう中で例の提供という意味において分類問題は重要です. 本講演では,Dynkin型のクイバーに付随した表現で有限個の軌道をもつ半単純概均質ベクトル空間の分類について, 具体的な例や計算を通してお話しさせていただきたいと思います.
第3回 中西 敏浩 氏
(島根大学総合理工学部)
測地的長さ関数によるタイヒミュラー空間の座標づけについて 5月18日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: タイヒミュラー空間を曲面上の双曲計量の変形空間と見る。種数g>1の閉曲面のタイヒミュラー空間は6g-6次元球体と同相であるが, 次元数より1つだけ多い6g-5個の閉曲線が定める測地線長さ関数で大域的にパラメトリゼーションできることがSchmutz, Okumuraらによって証明されている。 本講演ではこの事実の簡潔な証明を与えるとともに,パラメータがみたす関係式を紹介する。
第4回 武藤 哲也 氏
(島根大学総合理工学部)
熱力学と統計力学の初歩 6月1日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト:
第5回 橋永 貴弘 氏
(広島大学大学院理学研究科)
3次元solsolitonと対応する部分多様体の極小性 (田丸博士氏(広島大学)との共同研究) 6月8日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 「与えられたリー群が良い左不変計量を許容するかどうか判定せよ」という問題に興味を持っている. 一方, リー群上の左不変計量は, ある非コンパクト対称空間内の等質部分多様体と対応することが知られている. 本講演では, 3次元単連結可解リー群上の左不変計量がsolsolitonであることと, 対応する等質部分多様体が自然な計量のもとで極小部分多様体であることが同値となることを紹介する.
第6回 山上 敦士 氏
(京都産業大学理学部)
定理「すべての自然数は4つの平方数の和で表される」の代数的証明と解析的証明について 6月29日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: この講演では、「すべての自然数は4つの平方数の和で表される」という定理の、1770年にラグランジュにより与えられた代数的な証明を簡単に紹介した後、 整数論における上半平面上で正則な複素関数の有用性を示す重要な例として、1830年頃にヤコビにより与えられた解析的な証明も簡単に紹介させていただく。
第7回 瀬戸 道生 氏
(島根大学総合理工学部)
関数解析のいくつかの話題 10月12日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 関数解析について、今回はII_1-factor、冨田理論について簡単な話をする。
第8回 須田 庄 氏
(東北大学情報科学研究科)
複素球面上のデザインとコード 10月19日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 1977年, Delsarte, Goethals, Seidelは実球面に対してデザイン,コードの概念を定義した. 本講演では複素球面に対してデザイン,コードの概念を定義し, 複素球面上でのデルサルト理論を構築することを目標とする. 本研究はWaterloo大学のAidan Royとの共同研究に基づく.
第9回 坊向 伸隆 氏
(大阪市立大学数学研究所)
既約擬エルミート対称空間内の実形の分類について 10月25日(火)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第3セミナー室
アブストラクト: 実数Rは複素数Cの実部です. これを小難しい言葉で表現すれば『全空間をCとした場合 Rはその実形である』となります. 例えば, 複素正方行列全体M(n,C)を全空間とした場合は 実正方行列全体M(n,R)がその実形になり, 複素射影空間CP^nを全空間とした場合は 実射影空間RP^nがその実形になります. 結局, 実形とはC内のRの様なものです. この講演では, 全空間を既約擬エルミート対称空間(と呼ばれるもの)にした場合 その実形ってどうなるの? を考えてみたいと思います.
第10回 Gerhard Rosenberger 氏
(Univ. Hamburg)
On the surface group conjecture and embeddings of surface groups into cyclically pinched one-relator groups 11月2日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: PDFファイル
第11回 佐官 謙一 氏
(大阪市立大学理学部)
単位円板上の調和写像の擬等角性に関する二種類の特徴付けについて 11月9日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 本講演の内容はD. Partyka氏 (The John Paul II Catholic University of Lublin, The State University of Applied Science in Chelm, Poland) との共同研究に基づく。 $F$ を単位円板から単位円板の上への向きを保つ単葉な調和写像とする。$F$の擬等角性に関する一つの特徴付けは、$F$がbi-Lipschitzであること、あるいは$F$の境界値関数が幾つかのある特性を持つことであることが、Pavlovi¥'c により示されている。しかしながら、像領域を有界な凸領域にすると、境界がある程度滑らかという条件を課さない限り、この特徴付けをそのまま適用することは出来ない。ここでは、像領域が凸領域という条件下に有効な、$F$の擬等角性に関する新たな特徴付けを与えることが出来ることを述べる。
第12回 横山 俊一 氏
(九州大学数理学研究院)
Computational prospects of the arithmetic theory of elliptic curves 11月16日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 現代数論において最も重要な研究対象の一つに楕円曲線がある。 長年にわたり研究が進められているにも関わらず、未解決問題を 数多く持ち合わせており、多くの数学者の興味をひいている。 また、近年では暗号理論への応用も活発に行われている。
本講演では、このような楕円曲線を計算機数論の視点から眺めることの面白さをお伝えしたい。
更にこのうち「至る所良い還元を持つ楕円曲線」というspecial case に焦点を当て、そこに見え隠れする数学の技法、および未解決問題たちとその解決困難性について解説する。講演者の最近の結果についても紹介したい。
なお講演全体を通して、計算機実演を行う予定である。
1. 楕円曲線とは何か?
2. 至る所良い還元を持つ楕円曲線
3. Mordell-Weil 群とその計算困難性
4. 未解決問題たちと今後の展望
第13回 奥田 隆幸 氏
(東京大学大学院数理科学研究科)
コンパクト対称空間上のデザインとコードに対するFisher型不等式 12月14日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 球面上の代数的組合せ論においてよく知られる Fisher 型不等式は, 球面上のデザインの下限, コードの上限, 及びそれらの繋がりを与える意味で重要な定理である. ここでは一般のコンパクト等質空間に対して, この定理の一般化を考えたい. まず, 球面はランク 1 のコンパクト対称空間であるが, 一般のランク 1 のコンパクト対称空間について, 球面の場合の類似にあたる Fisher 型不等式が知られている(坂内--Hoggar [Proc.~Japan.~Acad.~'85]). ランクが 1 よりも大きなコンパクト対称空間については, これまでに実グラスマン多様体, 複素グラスマン多様体, ユニタリ群についても同様の結果が知られている(Bachoc--坂内--Coulangeon [Discrete Math.~'04], Roy [J.~Algebraic Combin.~'10], Roy--Scott [Des.~Codes Cryptogr.~'09]). また, 対称空間でない場合の結果としては, 複素球面上のデザインとコードにおける Fisher 型不等式が得られている(Roy--須田 [preprint]). 本講演では, 一般ランクのコンパクト対称空間における Fisher 型不等式の類似について紹介したい.
第14回 田中 守 氏
(東北大学大学院理学研究科数学専攻)
有限グラフのラプラシアンの第l固有値 1月11日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 有限グラフのラプラシアンの第2固有値の大きさは, そのグラフの頂点集合同士の結びつきの強さを表していると見なせる. 本講演では, l-1個の有限グラフの第2固有値の下からの評価と, そのグラフをいくつかの辺で結び連結にしたグラフの第l固有値の下からの評価の関係を与えたい. 時間が許せば, 第l固有値の下からの評価とグラフのHilbert 空間への一様埋め込み不可能性との関係についても述べる.
第15回 橋本 要 氏
(大阪市立大学数学研究所)
複素球面内の余等質性1の特殊Lagrange部分多様体 2月1日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 球面の余接束内にはStenzelが構成した余等質性1のRicci平坦Kahler計量が入ることが知られています. この講演では, このStenzel計量の対称性に着目し, 球面内の等質超曲面から構成される余接束内の特殊Lagrange部分多様体について説明します. これらの特殊Lagrange部分多様体になるための条件は常微分方程式によって記述することができます. したがって, この常微分方程式の解を調べることにより, 特殊Lagrange部分多様体の特異点の様子および無限遠での漸近挙動についても考察することができるので, その様子についてもご紹介したいと思います. なお, この講演は酒井高司(首都大学東京)さんとの共同研究に基づきます.
第16回 石田 政司 氏
(上智大学理工学部情報理工学科)
Diameter bound for Harmonic-Ricci flow 2月29日(水)
16:15-17:45
総合理工学部
大学院棟
第2セミナー室
アブストラクト: 閉多様体上の計量をRicci flowに沿って変形するとき, 多様体の直径(diameter)も一般に変化し得る. 3次元ポアンカレ予想解決の際Perelmanによって導入されたW-entropy functionalを応用することで, Ricci flowに沿った多様体の直径の評価が得られることが知られている(P. Topping '05'). 一方, Ricci flowは対称テンソルに関する, ある意味で最も単純ではあるが非自明なflowであり, その様々な一般化が導入されている. 本講演では特にその1つの例として, 調和関数に自然に付随するflowとRicci flowを組み合わせたHarmonic-Ricci flow (B. List '05')を取り上げ, そのflowに沿った多様体の直径の評価についてお話する予定である. 時間が許せばRicci flowの他の一般化に対する直径の評価についても言及したい.

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